社交ダンス|ドレスのスカート【裾】の仕上げ方・種類について
スカート裾の処理方法には様々なバリエーションがあります。
ご希望のお仕上げ方法は?と突然聞かれても、困ってしまうと仰るお客様が多くいらっしゃるため、代表的な方法をいくつかご紹介いたします。
スカート裾をリフォームされる場合や、フジタで裾が未処理の新作スタンダードドレスをご契約いただく場合などの参考に、どうぞご一読ください。
ホースヘア
現在ホースヘアは社交ダンス用ドレスの裾仕上げですっかり主流となりました。
ホースヘアには様々な幅や強度(ソフト・ハード等)があり、裾への縫い付け方にも複数の方法があります。
そもそもホースヘアをスカート裾先に縫い付ける目的は、スカートの動きを良く見せることです。軽く、ハリがある素材のため、スカートの裾先が跳ねやすく、スカートが広がりやすくなります。
ダンスを上手に踊っているように見せるためには、身体の動き以上に衣装がよく動いて(衣装が)踊っている方が有利なため、ホースヘアが衣装に使われるようになると一気に使用が広まりました。
外付け
先程、ホースヘアの縫い付け方にもいろいろある、と申し上げましたが、最も一般的な方法は表からホースヘアが完全に見えるように縫い付ける方法です。フジタではこれを「外付け」と呼んでいます。
踊らず立っているだけでも、裾先がやや跳ねたように見えるため、そのシルエット自体が好きだと仰る方もいらっしゃいます。
また、あえてスカートの生地とは異なる色のホースヘアを裾先に縫い付けることで、コントラストの効いたデザインを印象付けることも可能です。
一方「外付け」のデメリットは、スカートが短く見えることです。
長身の方であれば問題ないのですが、背の低い方がホースヘア外付けのドレスを着る場合、スカートの生地はホースヘアの上で終わってしまうためスカートがかなり短く見える可能性があります。
なお、フジタでは5cm幅のホースヘアを主に外付けに使用しております。
8cm幅や10cm幅など、幅広を好まれる方もいらっしゃいますが、前述の通り、ホースヘアの分だけスカートの生地を切る必要があるため、フジタではよほど高身長の方でない限りは幅広のホースヘア外付けはおすすめしておりません。
ラテンドレスなど、より激しい動きをアピールしたいドレスには、幅広のホースヘアを2つ折りにして裾先に縫い付ける方法もございます。
こちらですと少しの動きで裾がポンポンと跳ねてくれます。
たたき
スカート丈を長く見せたい方には、ホースヘアの「たたき」仕上げをおすすめしております。
この方法はスカート生地の裏側にホースヘアをたたきつけて縫うため、表から見たときにスカートの一番下まで生地が長く続いている状態を保つことができます。
外付けとは異なり、裾先が跳ねたようなシルエットにはなりませんが、踊ったときには(ホースヘアが付いていないドレスと比較すると)スカートが軽やかに動いてくれます。
社交ダンス、特にスタンダードの世界では、エレガントさが大切だとフジタは考えておりまして、ドレスのスカートはできるだけ長めの方がエレガントさをアピールしやすいと思っております。そのため、大人っぽい、落ち着いた、エレガントな女性の美しさを強調したい方にはホースヘアの「たたき」仕上げをおすすめしております。(ポップな、アクティブな、可愛らしさや快活さをアピールしたい方には断然「外付け」をおすすめいたします。)
巻き込み
幅が1cm前後の細めのホースヘアを裾先に巻き込んでしまう方法もよく使われます。
(あまり幅が太いホースヘアでは綺麗に仕上がらないため、巻き込み仕上げには幅の細いホースヘアを使用します。)
巻き込みですとスカート生地が途中で切れることもなく、末端まで生地が続くのでスカートが短く見えることはありません。また幅が細くてもホースヘアには(薄いスカートの生地よりも)ハリがありますので、スカート裾にボリューム感を出すことができます。
仕上がりイメージが「外付け」とも「たたき」ともまた異なりますので、シルエットや見た目の雰囲気をご確認いただいて、お好みでお選びいただければと思います。
ちなみにフジタでは、一番表面のスカートを「たたき」仕上げにした場合に、内側の2枚目や3枚目のスカートにこちらの巻き込み仕上げを施すことが多くなっております。
ホースヘアの扱いの難しさ
ご自身でドレスを縫ったことがある、という方はご経験済みかもしれませんが、ホースヘアというのは扱いがなかなか難しい素材です。ハリがあって自由に形を変える素材のため、ミシンで薄いスカートの生地に縫い付けるには、かなりの技術を必要とします。また、縫い付け方によってはホースヘアがスカートの裾先で下を向いて(お辞儀をして)しまい、綺麗に裾先が跳ね上がらない仕上がりになってしまいます。実際、海外の競技会では若い選手のドレスでホースヘアが綺麗に付いていないケースを頻繁に見かけます。(もちろん一度踊り出してしまえば、スカートは動き続けているため、あまり気にならないかもしれません。)
稀にお電話で「ホースヘアを上手に縫う方法を教えてほしい」というお問い合わせを頂戴するのですが、お電話でご説明するのはなかなか難しい技術になります。。。
ホースヘアを綺麗に仕上げたい場合は、プロに依頼されることをおすすめいたします。
シンプルな裾処理方法
スカートがストンと床に向かって落ち、裾先が跳ね上がらない仕上がりを好まれる方もいらっしゃいます。
踊った時のスカートの動きがゆったりしていて、ダンス用というよりはイブニングドレスのような優雅なイメージのお仕上げです。
過去にはプロの競技会においても、ロック仕上げのみという全くボリューム感のない、跳ねないスカートが大流行した時期もありました。
あくまでも、お好みでお選びいただければと思います。
豪華な裾仕上げ方法
他の人とは違うドレスにしたい、ゴージャスなスカートに仕上げたい、という場合にも様々な手法がございます。
ここ数年は羽根が大流行していますが、羽根やストーンなど高級な素材を使用すれば当然ゴージャスな仕上がりにはなるものの、ご費用も高額になってまいります。中には見た目からでは想像できないほど、作業に手間暇のかかるお仕上げ方法もございます。高級な素材を使って、手間暇のかかる作業で仕上げる場合には、リフォームと言えどもドレスが数着買えるのでは?と思うほどのご費用が必要なこともございます。
ご予算と相談しながら、豊富な選択肢の中からご納得いただける仕上がり方法をお選びいただければと思います。
ご注意いただきたいこと
仕上がりのイメージは、同じ裾処理方法であっても、スカートの素材(生地の種類)や円周の長さによっても大きく異なります。
そのため店頭に展示された商品や、お写真を参考に同じ方法でリフォームをしても、完成時のイメージがかなり違ってしまった、というケースも中にはございます。
最終的なドレスのシルエットや裾の仕上がりイメージにこだわりのある方は、くれぐれもご注意ください。
フジタでは、新作スタンダードドレスは最初にお召しいただく方の身長にあわせてスカート裾をカットするため、未処理の状態でショールームに展示しております。
そのため、レンタルでもご購入でも、ご契約いただく際に「裾の処理はどのようにいたしますか?」とご希望をお伺いしております。
その質問に即答できる方はよほどベテランの方で、何十着もドレスをお召しになったご経験のある方だとお察しいたします。
ほとんどのお客様は、裾の処理?と悩まれるものです。
また最近はボリュームのあるスカートのドレスが一般的になったため、長年ご愛用なさったドレスがストンとシンプルすぎると仰ってリフォームのご相談にお越しになる方も多くいらっしゃいます。
スカートにボリュームを出す方法も様々ございますので、ほとんどの方は悩んでしまわれます。
最終的には、ご予算を優先してお仕上げ方法を決める方が多い印象です。
スカートのイメージを変えるようなリフォームの場合は、お電話ではご相談が難しい内容になります。ぜひドレスをご持参いただくか、お送りいただいて拝見させていただいた上でお話をさせていただきたいと思います。
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ブログ監修者
川合 真桜子
(かわい まおこ)
ダンサー、オペラ歌手。 JDCプロフェッショナルラテンアメリカン元B級 EJBDFプロフェッショナルラテンアメリカンB級、プロフェッショナルスタンダードC級 東京音楽大学 声楽演奏家コース卒業。 同大学院修士課程オペラ研究領域修了。 東京二期会オペラ研修所予科特待生、本科特待生、本科修了時に奨励賞受賞、マスタークラス特待生。 これまでに「コジ・ファン・トゥッテ」よりデスピーナ役、「秘密の結婚」よりカロリーナ役、「魔笛」よりパパゲーナ役、「ドン・ジョヴァンニ(抜粋)」よりドンナ・アンナ役等を演じる。 2019年よりフジタのスタッフとしても就業中。